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いろいろ。

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   二人だけの宴

 

「綺麗な月ね」
「満月なんだぜ」
 博麗の巫女こと、博麗霊夢と、普通の魔法使いでありよく博麗神社に足を運んでくるこの少女、霧雨魔理沙の二人は、縁側に座り、お酒を交わしている。星が散りばめられた真っ暗な空に、完全な円を描く明月が浮かんでいる。
 幻想郷で、何度目か分からない満月。
「こう夜風に当たりつつ、お酒を飲むのはやはり気持ちのいいものね」
 霊夢が既に飲みほした盃に徳利からお酒を注ぎなおしつつ、魔理沙に話しかける。
「ははは。風流なことを言うなよ。霊夢らしくないぜ? まあでも、そうだな。それにこう気持ちがいいと悩みも吹っ飛ぶってやつだぜ」
 明朗に笑う魔理沙に、霊夢は一つ疑問に思い尋ねる。
「ん? 悩みなんてあるの?」
 心配という感情を少しだげ上乗せして、「それこそ魔理沙らしくないわよ」と付け足す。霊夢にとって魔理沙は、人に笑顔を送る代わりに物を盗んでいく奴、といったイメージがある。だから太陽の質屋に悩みは似合わないと思ったのだ。
「あっはっはっは。ただの比喩だぜ。私は過去から今、そして未来へも悩みなんて小さな奴のすることは決してしない」
 澄み切った表情の魔理沙につられて霊夢も自然と顔が崩れる。
「でも一つ忘れてるわよ、魔理沙。過去に一度だけ、あなたの言う小さい奴のしていることがあったわ」
 くすっ、と、霊夢。
「あれ? 私はいつでも猪突猛進のはずなんだが?」
「ふふ。そうね。でもこうして二人でお酒を飲むと思いださない? 出会ったときの事を」
「……そういや、あの時もこうして飲んでたっけ」
 二人は思いでに耽る。
 霊夢と魔理沙が初めて出会ったころを。
 
 
 
 いつものように、神社に妖怪退治の要請が来て、それこそいつも通り霊夢は心中面倒くさいと思いつつも足を運び、妖怪を退治しようとしたところ。
 既に一人の少女が妖怪と対峙していたのが目に入った。
 身長は自分と同じくらいで、白と黒をモチーフにしたエプロンドレスで身を包み、頭には魔女の被る帽子を載せている。右手のは箒を携えていたので、姿恰好から見て霊夢は一瞬で魔法使いだろうなと思考を走らす。
 しかし、その少女は傷だらけでもあり、何処をどう見ても負け戦。
 懸命に闘う少女だが、巨体を揺らすその妖怪も手も足も出ず、一方的にやられていた。
「っ!」
 このままではあの少女が危ないと思った霊夢は、お札に霊力を有りっ丈込めて妖怪に投げつけた。お札が頭に直撃した妖怪はみるみる内に消滅していった。抵抗なんて出来るはずもなく。
 最初からそこにいなかったように。
「ねぇあなた、大丈夫?」
 尻もちをついて驚いている少女に歩み寄って手を貸そうと霊夢が話しかけた。
 しかし、返ってきた言葉は。
「……私は助けてくれなんて一言も言ってないんだぜ」
 少女は手を弾いて、強い口調を霊夢に向ける。
「……何よその言い草。死にかけてたじゃない」
 せっかく助けてあげたのに、と霊夢は苛っとして少女のほうから踵を返して歩き出そうとした時、「あそこから本気を出そうとだな――」と後ろからした声が途中で消えた。静かに、少女が倒れたことだけが、辺りの音を生んだ。
 少女が妖怪から負った傷は、見た目以上に深く、体が悲鳴を上げたのだ。
「しょうがないわね……」
 霊夢は少女の肩を取って、二人だが一人、歩み始めた。

   ☆

「ここはどこなんだ?」
 少女の双眸に反射したのは、見慣れる部屋。
 部屋の造りは至ってシンプルで、畳が敷かれた和の雰囲気。
 少女は立ちあがって、自分のいる場所を模索しようと思ったが、立ちあがろうとすると全身に刺すような痛みが駆け巡った。
 思うように体が動かない。まるで糸が切れた操り人形のように、自分の意志とは無関係に、身体が動くのを拒否している。
 無理に動かせば何とかなるのだが。
「あら、起きたのね」
 いつの間にか霊夢が襖を開けて立っていた。片手にはお酒、もう片手にはそれを注ぐための盃。怪我人を治療する気配は一切感じられない。
「お前は……誰なんだ?」
「先にお礼とか言って欲しいわね。……まあいいわ。私は博麗霊夢。ここは私の神社で家よ」
 博麗、という言葉にピンと来た少女は、俯いていた顔を勢いよく上げて、霊夢を見る。自分と同じくらいの奴が自分よりも遥か高みにいるという事実に、驚きを隠せず、そしてその現実に嫉妬した色を瞳に灯している。
「……博麗の巫女ってお前のことか」
「そうね。で、あなたは?」
「霧雨魔理沙だぜ」
「魔理沙……ね」
 ふぅん、と一瞬だけ何かに思考を走らせ、霊夢は魔理沙に背を向けて縁側に腰を下ろした。
「とりあえず、こっちにきて」
 手招きする霊夢に、魔理沙は、「体が痛いんだぜ」と反抗するも、呆気なく「自業自得でしょ」と言いくるめられた。言い返すこともできない魔理沙は、体の疼痛に耐え、酷い感覚に顔を歪ませるも、それを口に出すことはなく魔理沙は霊夢の隣に座った。
「はい、お酒」
「は? 何なんだぜ」
 唐突に突き出された盃を訝しげに見つめ、霊夢の返答を待つ。
「こういうときは満月って相場が決まってるの」
 光の裏側の住人が闊歩する時間の空には、唯一の道しるべとなる明るい月が漂っており、それは見事にも完全なる円。
「なるほど、趣ってやつか」
「そんな感じね」
 二人は声を交わすことなく、ただ静かなこの世界に身を投じていた。
 生まれた時からの知り合いのように。
 ずっと前からこうなることが分かっていたように。
 言の葉を使わなくとも心は通じ合っていた気が、二人の間では起こっていた。
「強く、なれるかな」
 ふと、魔理沙が呟いた。
「強くなれるか、なんて疑問はどうでもいいことよ。強くなるのよ」
「……そうだな。どんな妖怪だろうと、力でねじ伏せれるくらい、強く」
「えぇ。そのまっすぐな瞳を忘れないでね」
 霊夢が麗らかな表情で、魔理沙の顔を覗き込む。
「霊夢のその瞳には敵わないけどな」
「ふふっ。そうだ、もし魔理沙が強くなったらその時は色々と――」
 霊夢の呟きは、剄風に乗ってどこか遠くの世界に運ばれていった。
「え? 最後、何て言ったんだ?」
「強くなったら教えてあげるわ」
 人さし指で下唇を隠す仕草に思わず心が揺れた魔理沙。
「おいおい、それならすぐに聞けそうだな」


 私は強くなる。
 霊夢に負けないくらいに。
 絶対に強くなるんだ。
 


「そうだなぁ。あのときは飲みまっくたな」
 酒瓶を持った右手を見つつ、ゆっくりと振りながら魔理沙は笑った。思いでは良い物かもな、と心の中で反芻する。
「あの時の魔理沙はまだお酒に弱くて困ったわ」
「…………そんなことない……はずだぜ」
「冗談よ」
 心から笑いあえる二人。
「あ、そういえば魔理沙。今更だけどこれからも妖怪退治には付き合ってもらうわよ」
 妙に脂下がった顔で霊夢は魔理沙に言った。
「ん? 本当に今更だな」
「いや、言っとかないと嘘つきになるからね」
「嘘つき? ……意味が分からないけど……。私はもし霊夢が嫌がっても無理やり付いていくだけだぜ!」
 









後書きみたいなもの。
さて、正直書いてて、
「これ大丈夫なの? 俺の頭大丈夫なの? リリカルマジカルなの?」
という不可思議な状態におちいってました。
短編で東方を書くのは久しぶりかつ、完結したのって初めてかも。。。
っていうか、最後の締めを無理やりした感が否めません。。。
うーん困った。

さて、戯言はここまで。
うーん。内容はどうなんでしょう。
霊夢と魔理沙の関係について触れたかったんですが、どうにも主人公の二人を題材にするのは抵抗がありましたw
つーか、何この霊夢可愛い、見たいな。
すみません。冗談です。
もっと深く書きたかったのですが、語彙不足という深刻な病に悩まされているので短く(まあそもそも短編だし)まとめた(つもり)です。
何か書いてて思ったのが、
背景描写少ないぜ
です。
修行不足ですね、分かります。
どうやって背景を表現していいか今の僕には理解できません。
そして後書きみたいなもののくせに長くなってきました。。。
修行が足りないという便利な言葉で締めさせていただきますw
次回は雰囲気を変えて書いてみましょうかね。。。
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のそのそと小説とか書いていこうかとしているものです。
同人活動とかしてたりしてなかったり。。。
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