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いろいろ。

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   十六夜咲夜の私情の日常

 

 私の名前は十六夜咲夜。
 十五夜の満月の次に当たる月を冠する名字と、咲夜と言う美しい名前をレミリアお嬢様から頂きました。名高い吸血鬼として、この紅い館の当主のレミリアお嬢様は、深窓の令嬢のように綺麗で、気高く、肩を並べたどんなのものも畏怖するほどのお方です。ただ最近は、そのカリスマ性も博麗の巫女やどこかの泥棒魔法使いによって失われつつありますが。
 この紅魔館でメイド長として働く私は、レミリアお嬢様に絶対の忠誠を誓っています。
 それは一種の愛の鎖でもあります。なぜなら、私はお嬢様を愛しており、またお嬢様も私を――。
 いや、もしかしたら一方通行かも知れませんが。それでも私の想いが色褪せることはないでしょう。
 運命を変えてくれる彼女が、運命を変えてくれた彼女が私の全てなのですから。

 

「咲夜、お願いね」
「はい、お嬢様」
 私の一日は、お嬢様のお着替えの手伝いから始まります。
 太陽に汚されていない、純白の肌。純度の高い真珠のように透き通っている四肢、自己主張の少ない胸に、強く触ると壊れてしまいそうな細く括れた腰。
 愛おしい。
 欲望に身を投じて、このままお嬢様に触れたいのですが、完全で瀟洒なメイドの異名を持つ私としては、そんな命を投げ出すことはしないのです。
 悪魔で冷静に、かつ、欲求を押し殺して、悪魔の着替えを行います。
 可愛らしい就寝着を脱がせ、いつものピンク色に染まった洋服を体に通していく姿に、危うく我を忘れかけるのはいつものことで、今は気持ちを収斂するのに神経をすり減らします。
「まだまだ大丈夫ですわ」
「どうしたの、咲夜」
 ついつい心の声を口にしてしまいました。
 お嬢様が私の心配をしてくださり、下から私の顔を覗き込んでいるのですが、仕草もいちいち可愛らしいご主人様です。この愛らしい表情はぜひとも永久に保存したいくらい……。一瞬、射命丸文に撮ってもらおうとも考えましたが、そんな無粋な真似はしたくないと自己嫌悪。
「何でもありませんよ、お嬢様。では食事に参りましょう」
「可笑しな咲夜ね。まあいいわ」
 さて、お嬢様と供に歩きます。
 お嬢様から少しばかり後ろに付いているのですが、とことこと歩いていくお嬢様を見ているだけでお腹が満たされるというものです。いや、こんなものは前菜としかなりませんか。
 


 
 お嬢様が食事を終えた所で、私はいつものように館の掃除に参ります。
 まだまだ側でお嬢様に見蕩れていたかったのですが、流石にそれはメイド長という立場にいる身としてはそんな我儘を突き通す分けにもいきません。
 この館は、私の能力で広さを変えているのですが、そのせいで掃除も大忙しです。
 他に雇っている妖精メイドは自分の身の回りのことだけで精一杯で、他のことには手つかずという様子で、清掃活動に身を投じているのが実質私一人という無理難題が毎日のように押し寄せてきます。
 異常に広い館を一人で綺麗にする。
 そんなことは普通無理でしょう。
 普通。
 平凡。
 凡庸。
 ノーマル。
 しかし。
 残念なことに私は異常な能力者なので。
 喜ばしいことにアブノーマルなので。
 普遍から逸脱した異端者なので。
 私にはそれが出来てしまいます。
 時間を止める。
 時間を操る。
 それが私の能力。
 壊れたものを直したり、あった事象をなかったことにする、ということは出来ないのですが。
 ちなみに空間を広げるというのは、時間と密接する関係なので弄ることは造作もないというわけです。
 さて、今日も時間を止めて掃除を始めます。
 広間、廊下、キッチン、各部屋。
 次々とこなしていきます。その途中、お嬢様の部屋へとやって参りました。
「失礼します」
「あら、咲夜。よろしくね」
「仰せのままに」
 お嬢様を見ると疲れも吹き飛びます。なぜここまで純粋な笑顔が出来るのでしょうか。見ているだけで照れてしまいます。
 私も負けじと澄んだ表情で言葉を返して、掃除を開始。お嬢様の部屋の場合は、お嬢様が居る時に限って時間を止めるなと仰せられております。なんでも「咲夜の掃除は見ていて美しい」とのこと。そんなことを聞いた日には、正直自分が壊れそうでした。ますます頑張り甲斐があります。
 てきぱきてきぱき。
 最速で、最高の丁寧さで、お嬢様の部屋を綺麗にして。
 自分を抑制しつつ。自分の時間を止めるように。
 終了したら挨拶をし、そして部屋から出て。
 そこから、やっと私の時間の始まりです。
 時間を止めて。
 踵を返して。
 お嬢様の部屋に侵入。
「さて今日も失礼しますね、お嬢様!」
 最早、限界といっても過言ではない、ぎりぎりの淵で漂っていた欲望が、縛っていた感情の糸が、椅子に座っているお嬢様を見た刹那、切れました。
 抱擁し、体温を共感した後に、丁寧に服を脱がし、お嬢様の体の隅々まで双眸に宿します。
 嗚呼何故こんなにも綺麗で儚いのか。
 そして壊れそうなのか。
 でも。
 だからこそ。
 だからこそ、輝いていて、美しいのだ。
 いつか崩れるかもしれない故に。
 今を全力で輝く。 
 そんなお嬢様の四肢を舐めるように堪能し、ベッドに体を預けるお嬢様を上から覆って。覆ってそれから――
「いや、ここまでか」
 私は従者なのだから。この先は踏み込んではならない。
 ただの付き人。
 そんな役者にもなれぬ者が、御伽噺のお姫様の心の中に決して足を踏み込むことは許されない。
 プライドだけは一流であるために、身を引かせて頂きます。
「ではお嬢様、本当に失礼しますね」
 慇懃な手つきで、お嬢様の華奢な体に服を飾ります。
 そして一瞥をし、部屋を後に。
「やはりお嬢様の体を見ると元気になりますね」
 独り言を吐きながら本来の仕事へと戻ります。
 大図書館は、パチュリー様と相談をしつつ、行います。そのため、ここでも時間の流れは変えません。また本の整理整頓は小悪魔に。
 ……うーん。
「パチュリー様も良い体を……」
「どうしたの、咲夜?」
「いえ、何でもありません」
 怪訝そうに私に視線を向けるパチュリー様に、一瞬冷や汗が出ました。さすがに勘が鋭い魔女様です。ついつい心の声を漏らしてしまったのは不覚です。
「……感じたら行動です……か」
 いつの日か、お嬢様が「思い立ったら吉日よ。感じたらすぐに行動に移しなさい」と言っていたのを思い出し、本当になんとなく。
 時間を止めてみました。
 そしてお嬢様と同じ様に。
「パチュリー様も、綺麗な体ですね。……そして美白すぎます」
 基本的に暗い場所で生活しているせいか、病的なまでに肌が真っ白です。雪すらも見劣りするんじゃあないでしょうか。
「体も――柔らかい」
 マシュマロを連想してしまいました。
 何という二の腕。
 全体的に痩せているというのに。
 丁度いい具合に体の造りが良い。
 しばらく触っていると「私は何をしているんでしょうか」我に返りました。
「はぁ……。掃除をしましょう」
 時間の流れを世界の普遍のそれに戻し、何気ない顔でパチュリー様と部屋の片付けを。服を直すのも抜かりなく。
 あまり外と接点が無いこの部屋は、埃が溜まりにくいようで、意外と早く清掃出来ました。なので早速次の場所に。
「さて、外の見回りですね」
 歩を止めることなく、館周辺を回ります。館の景観を失わないように、入念に見て回ります。
 今日も一段と紅い館に目を奪われつつ、歩き続けると門にやってきました。門の前には、この紅魔館の番人を生業とする紅美鈴がいます。しかし、門番というそれは建前であって、今はぐっすりと眠っていました。
「仕様のない子ね……」
 じっくりと美鈴を見てみますと、やはりこの子もなかなか――
「寝ているのなら時間を止める必要もありませんね」
 ゆっくりと。ゆっくりと手を伸ばして。
 体に――
 ナイフで一刺し。
「ぎゃああああああああああああ死ぬうううううううううう!」
「寝ていないでちゃんと仕事をしなさい」
 いつもいつも寝ている美鈴には困り果てます……。しかし普段から敵という概念に関わりがないこの館なので、門番として時間を持て余すことも分かるのですが……。「それでもあなたは寝すぎです」
「うぅ……すみません」
「もし次に来たときにまた夢を見ることがあれば、容赦はしません」
「うぅ……」
 踵を返し、館の中へと足を運びます。
 その前に。
 時間を止めて。
 美鈴の整った体に――
 もう一度ナイフで一刺し。
「なんでですかあああああああああああああ」
「愛の鞭です」
 悲痛な叫びをする美鈴に見えぬところで笑みを零しつつ、今度は本当に中へ。

 
 

 

 片付けも含め夕食を終え、本日の仕事を全うした所で、自室へと戻りました。
「今日も色々と精の出る一日でした」
 ふぅ、と一息つき、本日の出来事を振り返ります。なかなかどうして、楽しいひと時を過ごしたと思うのですが、何か忘れている気がします。
 不可解な風が私の心を上滑りするのです。
 大切な何かをせずに、このまま眠ってしまえば、激しい後悔の念に駆られそうで、しかし、それが何なのかという疑問に撞着してしまいます。
「うーん………………………あ!」
 袋小路の思考から、ついに疑問の根本を見つけました。
 原因が分かったので、結果を求めましょう。
 勢いよく立ちったせいで、座った椅子が倒れてしまいまいたが、構ってる余裕はありません。
「ではでは本日最後の活劇といきましょう」
 誰にも届くことのない言葉をつらねて、お嬢様の部屋に入りました。
 整った寝息は、一種の音楽祭を感じさせるほど、綺麗に部屋に流れています。常闇に溶けた髪は、艶っぽく枕にばらけていて、眠るお嬢様の横顔は硝子みたいに廊下から漏れる光に反射して輝いています。
「では」
 物音を立てずに、ゆっくりと扉を閉めて。
 世界を止めて、世界に一人なって、再び、世界から浮いた存在になって。
「お嬢様、頂きます」
 どうやら私は、就寝後のお嬢様へのセクハラを忘れてるようだったのです。
 この時、昼間にお嬢様に触れようとした時に感じたメイドという立場の矜持なんてものは微塵も覚えておりませんでした。一体どうしてか、お嬢様を見ると我を忘れるのです。
 お昼の時はまだ掃除が残っていまして、理性を保つことができましたが、今私を縛るものはありません。
 強いて言うならお嬢様くらいです。
 嗚呼自分は何て卑しい人なのでしょか。
 しかし、そんなことは最早どうだってよくなるくらい、些細なことになるくらい、お嬢様を。
「愛しております」

 

 

 ――私の日常は、お嬢様への忠誠心で出来ております。
 それは愛の裏の裏の裏の裏で出来た忠誠心――



後書きみたいなもの。
ややっ、咲夜さんメインで書きたい!
それもとびっきり可愛いのがいい!
とかそういう一抹の妄想が生んだ作品です。
いやはや、このような雰囲気の小説は書いたことがなかったんで、正直色々考えました。
それでもなんとか書き終えれて、これも咲夜さんが麗しいからだね!

さて、本題。
良い具合に壊れさせたつもりなんですが、どうでしょうか。
最初は我慢出来ても、時が経つにつれて衝動が強くなり、最終的には……って感じなことがありますです。
それは完全な瀟洒な従者でもありうる、しかも対象はお嬢様、と何とも美しい吸血鬼。
忠誠心Maxな咲夜さんには刺激が強すぎるわけです、はい。

テス勉しなきゃと思うんですが、面倒なんで次の短編プロット書きましょうです。
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のそのそと小説とか書いていこうかとしているものです。
同人活動とかしてたりしてなかったり。。。
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